【第22回】福岡 博史 先生

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『歯科と統合医療』


福岡 博史 (フクオカ ヒロシ)
医療法人社団明徳会福岡歯科 理事長

 2014年に日本歯科医師会が全国10000人に対して調査した結果によると、全体の55%の人が歯や口腔に何らかの異常を感じているにもかかわらず、その中で歯科治療を受けていたのは、なんと18.4%でした。「かかりつけ歯科医」をもつと健康長寿になるというエビデンスがあるにもかかわらず、いまだ「歯科」への受診のハードルは高いようです。歯の治療は、痛い、怖い、不快である、それなら少しくらいなら我慢してしまおうということなのかもしれません。

 10年前、日本経済新聞にて「アメリカのかたち―変質する医療―」という特集記事の中で代替医療が紹介されました。内容は、がん治療でも、心疾患の治療でもなく、「ニューヨーク市のある歯科医は、治療に癒しを組み込んだ。痛い、怖いといった不安を取り除き『歯科治療を癒しの場に変えたかった』という。これがストレス社会に生きる米国人に受け、いまや"癒し系歯科医院"が全米に続々と登場しつつある。」という「歯科」の紹介でありました。これは私達が、歯科に代替医療を導入した最初の発想と同じで、削る・刺す・抜くといった侵襲性の強いイメージがある歯科治療を快適性の高い、ホリスティックな対応のできる医療にするためには、統合医療は必然であったのです。代替医療の導入は、従来の機械論的な歯科医療から脱却し、良好な術者―患者関係の「場」をつくり出すことができ、患者自身の自然治癒力を賦活することもできます。統合医療により快適な歯科診療空間をつくることによって、歯科受診率が上がり、さらに口腔ケアを続ければ、結果的に一般医療費は減り、これにより老人医療費を大きく削減できるという推定もあります。

 もうひとつ歯科における統合医療の意義は、「歯科」(口腔)と「医科」(全身)が切り離されている医療制度の中で、統合医療によりそのつながりが見える医療にすることができるということです。現在歯科でも、分析的な西洋医学だけで対応できない「生活習慣や環境に基づく難治性疾患」「歯周病と全身との関係」「咬合と全身との関係」「歯科材料の全身への影響」「摂食嚥下障害」「口腔心身症」などがクローズアップされてきており、統合医療への期待は大きいのです。

 統合医療を学び、未来の医療に希望を持たれている日本統合医療学会会員の皆様が、ぜひとも歯科で一言「統合医療を知っていますか?」と声をかけてみてください。その歯科医院が、「行きたくないところ」から「行きたいところ」へと変わるかもしれませんよ!

【略歴】
1983年 東京歯科大学卒業
1992年 医学博士(聖マリアンナ医科大学)
現在 日本統合医療学会理事(指導医)
日本歯科東洋医学会常任理事(専門医)他役職多数
タグ:歯科医師
posted by IMJ2015事務局 at 00:00 | C専門分野からみた統合医療

【第21回】金谷 浩一郎 先生

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『統合医療に期待していること』


金谷 浩一郎 (カナヤ コウイチロウ)
医療法人 浩然会
耳鼻咽喉科かめやまクリニック 院長


 "Integrated medical treatment"、"alternative medicine"、あるいは、"complementary medicine"、これらの用語を、最初に使い始めたのは、いずれもニューソート系の"ユニティ派教会(Unity church)であるとされています(#1)。ニューソート(New Thought)は、19世紀アメリカで起こった思想運動で、キリスト教の伝統的な善悪対立概念を脱して、自然に遍在する知性や人間の本質が神聖であることなどを主概念とするものです。渡部昇一氏は、ニューソート系の思想家ウェイン・ダイアーの一連の著作を翻訳出版し、それらの緒言でニューソートについて概説しています。そのうち1冊のなかで、「ニューソートとは、世の中を二元的に見て、物質的なものに対する霊的なものの卓越性を主張する考え方」であり、また、ニューソートの始祖とされるエマソンについて、「アカデミックな哲学史では重要視されていないが、実質上のアメリカ精神といえる」と述べています(#2)。ニューソートは、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」等に代表される自己啓発書のルーツとなっている思想でもあります。

 統合医療を考えていく場合、やはり、その発生の母体となっている思想についても考察していく必要があると考えます。たとえば、ある種の健康食品や漢方薬に、既存の西洋医学の薬剤にはない特別な効果が認められたとしても、ある物質の人体に対する科学的な効果を治療に応用するという意味でいえば、既存の西洋医学と本質的に何かが異なるわけではありません。統合という意味は、科学に基づく既存の医学を、もちろん否定するわけではなく、それに欠落している何かをプラスするという意味であろうと理解しています。その既存の医学に欠落している何か、それが、第19回日本統合医療学会(IMJ2015山口大会)のサブテーマとして掲げられている「ヒトはBody,Mind,Spiritの存在」ではないかと考えます。そのような意味で、私は、今回の統合医療学会に大変期待し、また会に参加できることを楽しみにしております。

 #1 Glenn Mosley(2006)『New Thought, Ancient Wisdom: The History and Future of the New Thought Movement』Templeton Foundation Press.

 #2 ウェイン・W・ダイアー著、渡部昇一訳(1990)『小さな自分で一生を終わるな!』株式会社三笠書房

【略歴】
1987年 長崎大学医学部卒業
1987年 山口大学耳鼻咽喉科学教室 入局
1994年 小野田市立病院耳鼻咽喉科 医長
1997年 厚生連長門総合病院耳鼻咽喉科 部長
1998年 山口大学学位授与(医学博士)
2001年 済生会山口総合病院耳鼻咽喉科 部長
2006年 耳鼻咽喉科かめやまクリニック 開設
       現在に至る
タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 16:52 | D統合医療に期待していること

【第20回】関 隆志 先生

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『統合医療にできること』


 関 骼u (セキ タカシ)
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
高齢者高次脳医学研究部門 講師 

 補完代替医療では治療効果があった例が宣伝に利用されることはあっても、効果のなかった例が検討の俎上に載せられることは少ない。どのような症例に適用となりどのような症例には適用にならないのかがわからない治療方法が多い。統合医療にできることは大きく三つある。一つは、チーム医療の中に伝統医学を含む補完代替医療(Traditional medicine and Complementary and Alternative Medicine; TCAM)を取り込むこと。もう一つは、伝統医学の知見を統合し、現代の医学においていままで気づかれなかった病気の原因を解明し治療方法を開発するヒントとすること。そして、統合された伝統医学の知見を用いてあまた存在する補完代替医療の効果を最大限に引き出すためにそれぞれの補完代替医療の適用をみいだすことである。

 TCAMは現代西洋医学の医療の中でこそ生きてくる。さまざまな検査などにより効果や安全性の評価が可能だからである。TCAMがもつ心身・疾病に対する視座は現代西洋医学と大きく異なるものがある。そこには、病気の原因を発見し難治性疾患の新たな治療方法を開発するヒントが隠れているのではないか。現代の科学の手法で再検討することにより、TCAMを現代の医学を発展させるヒントとして活用することができるであろう。また、伝統医学理論は種々の補完代替医療を統合・体系化する可能性を秘めている。統合・体系化は個々の補完代替医療の適用を見いだし、最大限に活かすことにつながるだろう。

【略歴】
東北大学医学部附属病院老年・呼吸器内科医員、
東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座講師、
同高齢者高次脳医学講座講師を経て現職。

タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 16:15 | D統合医療に期待していること