【第19回】塩田 清二 先生

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『統合医療に期待していること』

塩田 清二 (シオタ セイジ)
昭和大学医学部顕微解剖学教室 教授 


世界に類を見ない超高齢化社会が現実となりつつある日本において、いかに健康で長寿を全うするかということは、医療の世界のみならず、大変大きな社会問題であるといってよいでしょう。また毎年1兆円づつ増加する医療費の削減をどのようにすべきか、これは早急に解決すべき課題です。統合医療は、まさにこの点において大変重要な役割を演じることは間違いのないことだと思われます。生活習慣病、がん、認知症、精神疾患などの疾患について統合医療がどのように役立つか、その真価が今まさに問われているといってよいでしょう。統合医療は、疾病の予防に力点を置いていることから、医療費の軽減や削減に大きな役割を演じることは間違いありません。これは日本のみならず、世界各国の抱える重要な課題であり、統合医療が今後益々医療の中で重要性をもっていくことは間違いないことだと思われます。

ところで、平均寿命と健康寿命にはおよそ10年のギャップのあることはよく知られた事実です。いかに健康で長寿を全うするかということは、大変重要なことです。私が属している学会はアロマセラピー学会です。アロマセラピーは、単に香りを楽しむだけにとどまらず、精油のもつ様々な生理・薬理作用を利用して医療の場で臨床応用されています。とくに、認知症の予防・改善、がんの終末期医療、緩和医療、更年期障害の治療など、多方面で使われています。アロマセラピーの研究は、基礎・臨床医学研究者のみに限定されず、看護、介護、薬学、化学などの広い分野に関わっています。今後のアロマの研究課題としては、ヒトでの臨床効果についての医学的見地からみた実証試験が大変重要であると考えています。それは統合医療においても同じことだと思います。従来の西洋医学の研究者が、違和感なく統合医療の研究結果を受け入れられるような環境が出来つつあります。その流れに沿った実証的研究が強くのぞまれます。

今後の統合医療に期待していることは、統合医療学会の会員が他の関係学会と深く交流を行い、いろいろな立場の人たちの意見や考え方を学び、それを現場で生かして行くことです。また、世界の国々において実践されている統合医療を学び、日本に即した統合医療を考えて実現すること、それこそが日本の統合医療がさらに大きく飛躍し発展していくために必要なことであると思われます。

【略歴】
早稲田大学教育学部生物学科卒業、医学博士(昭和大学)
昭和大学医学部解剖学教室教授
米国チューレン大学医学部兼任教授
VIP/PACAP およびRegulatory Peptides 国際学会理事
アロマセラピー学会理事長

タグ:アロマ
posted by IMJ2015事務局 at 16:47 | D統合医療に期待していること

【第18回】山本 竜隆 先生

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『自然欠乏症候群に関して』


山本竜隆 (ヤマモト タツタカ)
朝霧高原診療所 院長 富士山静養園 園主


米国では自然欠乏障害Natural-deficit-Disorder(以下、自然欠乏症候群とする)という言葉が使われ始めている。この言葉はLAST CHILD IN THE WOODS「あなたの子どもには自然が足りない」において著者のリチャード・ルーブが提唱。春日井晶子氏の翻訳された本も出版されている。この本では、自然から離れることで人間が支払う対価として、人間の感覚の収縮、注意力散漫、体や心の病気を発症する割合の増加があるとしている。また「指向的集中」と「感応的集中(無意識の注意)が挙げられ、都市型生活では、「指向的集中による疲労」に陥り、その結果、衝動的行動、苛立ち、焦燥感、注意力低下などが現れるという。

自然欠乏症候群には、どのような背景があるのか。人間は数千年、数万年間、自然の中で、自然のリズムに従って生きてきた動物の一種であり、遺伝やホルモンも、その影響が深く刻まれている。つい数世代前までは、太陽や月のリズム、四季の変化、100%自然素材の食材と衣服で、人工音もほとんど無い生活様式であった。しかしここ数十年の、ライフスタイルや環境の変化は、過去数千年の人間の営みからは考えられなかったほど大きなものである。世界の中でも、特に日本の都市生活において、自然欠乏状態は増加しているようだ。我々は、もう原始の生活に戻ることはできないが、不自然な状況が続くことで、さまざまな症状や疾患の出現する可能性は十分にあるように思うのである。

ちなみに医学の父、ヒポクラテスは「自然から遠ざかるほど病気に近づく」という言葉を残している。統合医療の一つの切り口としても、自然欠乏症候群は重要な疾患概念だと考えている。

【略歴】
医師・医学博士
アリゾナ大学医学部統合医療プログラムAssociate Fellow(2000年〜2002年)をアジアで初めて修了。
その後、統合医療ビレッジグループ総院長、中伊豆温泉病院内科医長、
(株)小糸製作所静岡工場診療所所長・産業医などを経て、地域医療とヘルスツーリズムの両輪で
行うWELLNESS UNIONを設立している。
タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 16:59 | C専門分野からみた統合医療

【第17回】小池 弘人 先生

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『ジャングルカンファレンスからの力』


小池 弘人 (コイケ ヒロト)
小池統合医療クリニック院長
統合医療カンファレンス協会代表理事


 東京で統合医療専門の小池統合医療クリニックを開設して8年が経ちました。統合医療の臨床において、最も手薄な領域とも言える相談型、支援型の外来を展開しながらも何とか今日までやってくることができました。これは様々な方のご支援に加え、カンファレンスという場におけるセラピストをふくめた医療従事者の方々のご助言、ご助力によるところが大きいと感じております。

 現在、8年間継続している自院での統合医療カンファレンスに加え、2か月に一度、代々木のウィルワンアカデミー様のご協力のもと、公開カンファレンス形式の「ジャングルカンファレンス(JC)」を開催しております。どちらも、アリゾナ大学の統合医療プログラムにおいて週一回開催されているラウンドテーブルカンファレンスを源とし、私が試行錯誤を繰り返しながら開催してきたカンファレンスです。

 通常の臨床病理カンファレンス(CPC)のような「唯一の正解」に至る形式ではなく、多元主義的な、ある意味でアイデア創出を目的としたブレインストーミングに近いものです。これにより、参加者は多様な視点を持つことができ、他の職種を理解し連携することも可能になってきます。具体的には、症例に対し様々な職種の立場から、見立てや意見を述べていく、そしてそれに対しては、とりあえず批判や否定はしない。一通りの意見が出てから、改めて議論を開始する、といったものです(詳細は本稿では紙面に余裕がないので、拙著『統合医療の考え方活かし方』をご参照いただけましたら幸いです)。
本年(2015年)、このジャングルカンファレンスの定期開催と拡大を目的として「一般社団法人 統合医療カンファレンス協会(IMCI)」を設立致しました。統合医療の実現におけるカンファレンスの重要性を理解し、立ち上がってくれた仲間たちとの第一歩です。

 統合医療は多職種連携をその要とします。カンファレンスはまさに多職種連携そのものであり、また参加者の生涯教育にもなりうるものです。そして私自身もこのカンファレンスから力をもらい、統合医療の実現に日々邁進していきたいと考えています。

 本年開催される山口大会では、この統合医療カンファレンス協会のさらなる成果を発表したいと思います。

【略歴】
1995年群馬大学医学部卒業
2001年同大学院卒業 博士(医学)
2001年同大学医学部助手(学内講師)
2004年アリゾナ大学統合医療プログラム修了
2007年小池統合医療クリニック開院
タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 00:00 | A私と統合医療