【第3回】久保 千春 先生

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『統合医療における心身医療の役割』


久保 千春 (クボ チハル)
九州大学 総長

         
 現代医療は診断や治療において大きく進歩してきています。 
1)高度先進治療:移植医療、遺伝子治療、再生医療、ロボット手術、重粒子線治療など
2)新薬の開発:分子標的治療薬、抗がん薬、高血圧治療薬、高脂血症治療薬など 
3)診断機器の開発:CT、f-MRI、PET、SPECTなど
 しかし、医療が進歩しているにも関わらず、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や心身症、不安症、うつ病などのストレス関連疾患は増加しています。また、現在の日本は少子高齢化、核家族化、過疎化などにより課題も多く見られます。

1)少子高齢化による老年病の増加
2)ストレス増加によるストレス関連疾患の増加
3)長寿社会であるがQOLは低い
4)介護の問題
5)医療費の高騰
6)西洋医学のみの限界

 このようなことから、全人的医療、地域での支え合い、補完代替医療を含めた統合医療、予防医療、などが期待されてきています。
 ところで、心身医療は1)身体・心理・社会・実存の側面からみる全人的医療、2)心身相関を基本:精神・神経・内分泌・免疫系の生体反応の観点、3)患者中心の医療、4)チーム医療、などです。心身医学は西洋医学を出発点として、第1期:神経症についての心身相関研究、第2期:身体疾患(いわゆる心身症)についての心身相関研究、第3期:生物心理社会的モデルに立脚した全人的医療への発展、となってきています。

 さて、統合医療は近代西洋医学を中心として、伝統医学や代替医療(鍼、マッサージ、食事療法、ハーブ、音楽療法など)を統合して、全人的医療を患者中心に行うものです。その基本は1)患者中心、2)全人的医療、3)治療のみならず、健康予防までの医療です。このような点は心身医療と共通の部分があります。
 今後の新たな医療システムにおいて心身医学・心身医療は統合医療の土台として機能していく必要があると思われます。

【略歴】
1973年 九州大学医学部卒業 
              同病院心療内科入局
1982年 オクラホマ医学研究所(アメリカ)へ留学
1984年 国立療養書南福岡病院内科医長
1993年 九州大学医学部診療内科教授
2000年 九州大学大学院医学研究院心身医学教授
2008年 九州大学病院長
2014年 10月 九州大学 総長
第19回日本統合医療学会 プログラム委員長
タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 17:00 | C専門分野からみた統合医療