
『統合医療に期待していること』
金谷 浩一郎 (カナヤ コウイチロウ)
医療法人 浩然会
耳鼻咽喉科かめやまクリニック 院長
"Integrated medical treatment"、"alternative medicine"、あるいは、"complementary medicine"、これらの用語を、最初に使い始めたのは、いずれもニューソート系の"ユニティ派教会(Unity church)であるとされています(#1)。ニューソート(New Thought)は、19世紀アメリカで起こった思想運動で、キリスト教の伝統的な善悪対立概念を脱して、自然に遍在する知性や人間の本質が神聖であることなどを主概念とするものです。渡部昇一氏は、ニューソート系の思想家ウェイン・ダイアーの一連の著作を翻訳出版し、それらの緒言でニューソートについて概説しています。そのうち1冊のなかで、「ニューソートとは、世の中を二元的に見て、物質的なものに対する霊的なものの卓越性を主張する考え方」であり、また、ニューソートの始祖とされるエマソンについて、「アカデミックな哲学史では重要視されていないが、実質上のアメリカ精神といえる」と述べています(#2)。ニューソートは、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」等に代表される自己啓発書のルーツとなっている思想でもあります。
統合医療を考えていく場合、やはり、その発生の母体となっている思想についても考察していく必要があると考えます。たとえば、ある種の健康食品や漢方薬に、既存の西洋医学の薬剤にはない特別な効果が認められたとしても、ある物質の人体に対する科学的な効果を治療に応用するという意味でいえば、既存の西洋医学と本質的に何かが異なるわけではありません。統合という意味は、科学に基づく既存の医学を、もちろん否定するわけではなく、それに欠落している何かをプラスするという意味であろうと理解しています。その既存の医学に欠落している何か、それが、第19回日本統合医療学会(IMJ2015山口大会)のサブテーマとして掲げられている「ヒトはBody,Mind,Spiritの存在」ではないかと考えます。そのような意味で、私は、今回の統合医療学会に大変期待し、また会に参加できることを楽しみにしております。
#1 Glenn Mosley(2006)『New Thought, Ancient Wisdom: The History and Future of the New Thought Movement』Templeton Foundation Press.
#2 ウェイン・W・ダイアー著、渡部昇一訳(1990)『小さな自分で一生を終わるな!』株式会社三笠書房
【略歴】
1987年 長崎大学医学部卒業
1987年 山口大学耳鼻咽喉科学教室 入局
1994年 小野田市立病院耳鼻咽喉科 医長
1997年 厚生連長門総合病院耳鼻咽喉科 部長
1998年 山口大学学位授与(医学博士)
2001年 済生会山口総合病院耳鼻咽喉科 部長
2006年 耳鼻咽喉科かめやまクリニック 開設
現在に至る
タグ:医師
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