【第29回】酒谷 薫 先生

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『統合医療は2025年問題の切り札になるのか?』


酒谷 薫(サカタニ カオル)
日本大学 教授 
工学部次世代工学技術研究センター長、医学部脳神経外科(兼担)

これから10年後に起きるといわれている2025年問題。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、2200万人、4人に1人が75歳以上という超高齢社会が到来するのです。これまで日本経済を支えてきた団塊の世代が給付を受ける側に回るため、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、社会保障財政が破綻するかもしれないのです。2025年問題を解決するひとつの方法は、病気を治療する医療から病気にならないように予防する医療といわれています。PETなどの先端的医療機器を用いて早期発見早期治療を行うのも予防ですが、これでは医療費を抑制することはできません。やはり健康を維持増進し、病気にならないようにするのが医療費を抑制する一番だと思います。私は統合医療にはその方法がたくさんあるように思います。例えば中国伝統医学には病気の前段階の「未病」という概念があり、養生法を呼ばれるさまざまな未病の治療方法が提案されています。またアロマセラピーや音楽療法などの非薬物療法もリラクゼーション効果によりストレスに起因する生活習慣病などの体の病気、そしてうつ病などの心の病気を予防する効果があるように思います。しかし、これらの補完代替医療を医療現場に導入するうえで、その効果や安全性に関する科学的検証・評価を行うことは不可欠だと思います。西洋医学的な薬物療法では、基礎研究に始まり、臨床的効果や安全性に関する一連の臨床研究が行われ、それらをクリアして初めて臨床の場で使用できるようになります。統合医療における補完代替医療も同様に科学的研究は不可欠だと思います。なぜならば、「効くかどうかも分からないセラピー」を患者に提供することはできないし、また「なぜ効くのか分からないセラピー」が幅広く普及するとは思えないからです。補完代替医療における科学的エビデンスの確立は、統合医療に求められている大きな課題のひとつだと思います。


【略歴】
日本大学教授、工学部・次世代工学技術研究センター長、
医学部・脳神経外科兼任教授。(一社)日本中医学会理事長。
昭和56年 大阪医科大学卒業、医学博士(大阪医大)、工学博士(北海道大学)。
医療工学の他、中国伝統医学の研究を行っている。

タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 00:00 | D統合医療に期待していること