【第37回】中井 吉英 先生

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『統合医療への期待』 


中井吉英(ナカイ ヨシヒデ)
関西医科大学名誉教授 
弘正会西京都病院名誉院長・心療内科部長


 ノースランド大学のトマス・P・カスリス教授は「世界の偉大な十字路である日本は、すべての社会の未来像を先取りしている」と述べている(湯浅泰雄著「身体論―東洋的心身論と現代」講談社学術文庫 1996年)。西洋と東洋(医学においては西洋医学と東洋医学を含む非西洋医学)を統合することが、世界におけるわが国の使命ではなかろうか。

 医学を含むあらゆる領域で、新たな価値観の構築が急務である。それなしにこのまま科学技術が発展すると、人類を含む地球上の生命が絶滅することは明白である。唯一絶滅から救はれる道は。西洋的価値観と東洋的価値観の統合である。医学・医療においても、西洋医学(最新の医療技術も含めた)と非西洋医学が統合され初めて完成された医学・医療となる。欧米では二つの医学が別個に行われている。東西の十字路であるわれわれ日本人に課せられた使命は両者の統合とその実践である。

 統合医療がわが国で発展するための条件は何か。先ず研究方法の開発が急務である。西洋医学の研究方法である原因―結果といった線形の要素還元主義による方法では、統合医療の治療効果を含めたエビデンスを明らかにすることはできない。次に統合医療による@医療費の削減、AQOLを含めた国民の満足度の調査と研究が必要であろう。また、西洋医学と非西洋医学における治療法のどのような組み合わせが、いかなる病気の治療や予防および健康維持に効果があるか、といった研究が必要であろう。

 また、医療を変える力は国民にある。わが国に統合医療が根づくためには、国民の声により国が動かされるようなわれわれの活動が必要である。そのためには統合医療のモデルケースとなる大学、病院、クリニックの全国規模の設立が急務であろう。今後中心となって医療に関わるのは患者でありその家族である。彼らと協同するために、医療に携わるあらゆる職種の人たちがネットワークを作り情報を交換しつつチ−ムとしての活動が期待される。   

 日本統合医療学会は、このような活動を推進するためのネットワーク作りの中心となって、研究成果の発表、ストラテジーの構築とその実践のための重要な場として発展することを期待している。

【略歴】
1969年 関西医科大学卒業  同大学大学院医学研究科入学(内科学専攻) 
1983年 九州大学医学部心療内科 講師
1993年 関西医科大学内科学第一講座 教授
2000年 関西医科大学心療内科学講座 初代教授 
2004年 日本心身医学学会理事長(歴任)
2008年〜認定NPO法人日本心療内科学会理事長
2009年〜関西医科大学名誉教授ほか


タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 17:04 | D統合医療に期待していること