【第46回】和辻 直 先生

2015年7月1日046和辻 直.jpg




『統合医療と鍼灸医療』


和辻 直(ワツジ タダシ)
明治国際医療大学 基礎鍼灸学講座・教授 

 統合医療には期待が大きい。今後の医療の大きな役割を担ってくれると感じているからである。日本は超高齢社会に突入し、疾病構造の変化、治療医療から予防医療への転換などが始まっており、従来型医療の変革が求められている。

 統合医療は全人的医療で患者中心の医療は言うまでないが、実際にそれを実践できているのか?というと現場では色々な難題に直面する。一つはチーム医療であり、その現場は多様であって、統合医療が目標としているチーム医療を実現できているのは、まだ数えるほどではないかと思う。しかし、患者は統合医療を実践してほしいと願っており、そのニーズに応える医療機関が僅かであるが増えてきている。

 今から30年以上前に京都に鍼灸大学が誕生し、「東洋医学と西洋医学を調和する真の医学を求めて」という願いで開学された。私も当時、別の医療職種を志していたが、その建学の精神に惹かれ、京都丹波の地に入った。その選択は誤りではなく、予想に以上に多くのこと学び、体験することができた。その理由は附属病院での貴重な実践体験である。統合医療的なスローガンはあったものの、実際は苦難が多くて試行錯誤の日々である。先に述べたとおり、統合医療の実践は附属病院や統合医療センターなどで一部分はできているが十分ではない。最近になって本学でもようやく、在宅医療において訪問診療・訪問看護・訪問薬剤・訪問リハビリに、在宅鍼灸といったチーム医療の実践ができる一歩を踏み出した。

 鍼灸に限って言えば、補完医療や代替医療の代表選手であるが、日本の医療の枠組みには入っていない。今後も医療制度の問題で保険医療への組み入れは難しく、混合診療における対応が望まれる。日本の鍼灸医学の良さは、時代に応じて変容してきたもので、決して伝統医学(東洋医学)のみに偏ってはおらず、鍼灸師の国家試験も現代西洋医学と東洋医学が出題されるために、それら両方を学習しなければいけない。また鍼灸の良さは低コストの医療で、エコ医療でもある。医療費が高騰する現在、医療コストがかからない医療が今後求められる。さらに鍼灸診療における科学的根拠は重要な課題であり、山口大会のテーマ『Art&Science with Humanity』に深く関係している。本大会で、これらの課題が多く議論され、新たな展開として導かれることを期待している。


【略歴】
1987年     明治鍼灸大学 鍼灸学学部 卒業
1987〜1989年 明治鍼灸大学附属 研修鍼灸師
1989〜1991年 明治鍼灸教員養成施設 卒業
1991〜1994年 明治鍼灸大学 東洋医学教室 助手
1994〜2004年 明治鍼灸大学 鍼灸診断学教室 講師
2004年     博士(鍼灸学)(明治鍼灸大学)
2004〜2015年 明治鍼灸大学・大学院 東洋医学基礎教室 助教授
2015年〜現在    明治国際医療大学 基礎鍼灸学講座 教授
        同大学大学院 基礎鍼灸学T(伝統鍼灸学)教授
日本統合医療学会 代表代議員、全日本鍼灸学会・諮問委員 認定鍼灸師、
日本中医学会 評議員など


タグ:鍼灸師
posted by IMJ2015事務局 at 16:42 | C専門分野からみた統合医療