【第48回】竹谷内 啓介 先生

048竹谷内 啓介.jpg2015年7月8日


『統合医療における
     カイロプラクティック業界の役割』



竹谷内啓介 (タケヤチ ケイスケ)
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC) 会長


「統合医療」は西洋医学と代替医療を組み合わせた患者中心の広義の医療であると私は捉えています。統合医療は、病気治療の「メディカルケア」よりも病気予防や健康増進を目的とした「ヘルスケア」に焦点をあてています。

現在、日本では医師や看護師などの医療従事者と代替医療提供者が協力する環境が整備されておらず、患者の立場からすると西洋医学(現代医療)以外の選択肢として十分な情報をもとに代替医療を選ぶ機会はほとんどありません。そのため統合医療の普及には、医療従事者の代替医療への理解と協力が必要だと考えています。

カイロプラクティックは19世紀後半アメリカで発祥した脊椎マニピュレーションを用いて神経機能を回復させる徒手療法であり、世界90カ国以上に普及しています。WHO(世界保健機関)は(補完)代替医療として認知し、カイロプラクティックの専門教育と臨床業務についてのガイドラインを2005年に発行しています。多くの国々では大学でカイロプラクティックの専門科目を学んだのち資格を取得します。この資格は脊椎マニピュレーションの施術以外にもX線の撮影や筋骨格系に関する診断が認められています。一方、我が国では遅れを取り未だに国家資格ではありません。

日本カイロプラクターズ協会(JAC)では患者の安全を守る観点から、自主規制を業界内で周知させていくことを決定しました。2012年に独立行政法人国民生活センターが「手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−」の報告書を発表し、センターから要請を受けた当会はカイロプラクティックの広告と安全性に関するガイドラインを作成しました。またWHOによる教育基準を満たしていない施術者の安全性を向上させる目的で医学知識やリスクマネジメントを重視した「安全教育プログラム」を開講しました。適正な教育基準を満たした施術者に対しては、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)が毎年実施する登録試験に合格した者を登録し、定期的に厚生労働省へ登録者名簿を提出しています。 

こうしたカイロプラクティック業界の取り組みが、業界全体の安全性と倫理を底上げすることにつながります。統合医療を構成する未整備の代替医療を適切な基準で制度化することは、統合医療の信用を高めることに大変役立つと考えています。

【略歴】
2002年 オーストラリアRMIT大学カイロプラクティック学科卒業
2007年 アジア太平洋カイロプラクターズ連合副会長
2009年 国際カイロプラクティック試験委員会アジア太平洋地区代表
2011年 東京カイロプラクティック院長
2013年 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会会長

posted by IMJ2015事務局 at 14:57 | C専門分野からみた統合医療