【第51回】笠井 正晴 先生

2015年7月29日051 笠井_R.JPG

『北海道における統合医療の歩み』



笠井 正晴(カサイ マサハル)
北海道鍼灸専門学校理事長、札幌北楡病院名誉院長、
(IMJ名誉会員、前IMJ北海道支部長)


渥美和彦先生(現名誉理事長)が1998年12月に日本代替相補伝統医療連合会議(現日本統合医療学会)を立ち上げられ、全国組織作りのため北海道でも会を立ち上げてほしいとの依頼が当時札幌北楡病院理事長(現社会医療法人北楡会会長)の川村明夫先生にあり、早速病院内に事務局を置き1999年度に支部を設立し研究会を開始しました。

代替医療も様々に呼ばれる中で現在は統合医療という表現でまとまるようになりましたが、代替相補伝統医療やほかの癒し方法との立ち位置がまず問題になりました。西洋vs東洋医学、先端vs伝統医療、治療vs予防・未病、医療vs非医療、医療国家資格vs無資格等さまざまな言葉が対峙する中、全体像と枠組み作りが問題でした。渥美先生のお考えはまず国家資格を有する人々の理解を得るところから始まりました。その後医療関係、ヒーリング、思想など多岐にわたる領域の方々の賛同を得、政治的にも働きかけ垣根を取り払った新たな領域として市民権を得るようになってきたわけです。

北海道でもまず医療関係者の理解を得るべく北海道医師会長(当時)の吉田信先生(故人)に初代北海道支部長をお願いし、医師、看護師をはじめ国家資格のある方々への宣伝をしさらに北海道鍼灸師会、柔道整復師会、薬剤師会の会長さんに北海道支部会の幹事になっていただきその後、気功、アロマ、心身、音楽、養生療法、食品関係などへと領域を広げる試みをしました。同時に全国会員数を増やすために会員誘致法は全国学会、地方支部会の別登録制ではなく全国学会に登録すると自動的に地方支部会員になるようにしました。この制度はのちに別個登録制となりましたが北海道支部は現在100名を超える会員数となっております。

次に統合医療を具体的にどのように実践できるかということが大きな問題でした。本来なら事務局のある札幌北楡病院のような中核病院が統合医療科を設置して外来部門を設けることにより実践と啓蒙活動も進むと考えました。しかし、実際に設備投資し外来、鍼灸師、気功,心理療法士、その他の部門をつくるために概算しても現行保険制度下では余裕もなく厳しく実行できないままです。また統合医療の諸領域のネットワークづくりをめざし大学も含め連合組織づくりを行いました。その間統合医療に造詣の深い熱意あるドクターが開業されて実践されて芽が開き始めているのが現状です。日本全国でも大学病院はじめ大きなセンターが実践し始めてくれておりますが政策による支援と医学教育での啓蒙が大きな柱と思います。企業がエコ活動や平和支援活動をしていることがインセンティブになるように統合医療を行っているということがインセンティブになってほしいと思います。

学会発展のためご尽力いただいております仁田新一理事長と柴田眼治大会長に感謝申し上げ大会の成功祈念申し上げます。

【略歴】
1948年札幌生まれ、1974年北海道大学医学部卒 第3内科入局、血液内科骨髄移植専門、1979年米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校オンコロジー部門研究員、1985年札幌北楡病院内科部長、米国シアトル、フレッドハッチンソンがん研究所研修、1987年より北海道大学医学部非常勤講師、2004年北海道鍼灸専門学校理事長、2007年札幌北楡病院院長、2010年同名誉院長、 父(故人)が鍼灸柔整師で北海道鍼灸師会、柔道整復師会会長を務めた縁で伝統医療と関わりあり。
(趣味:アウトドア関係、音楽)


タグ:鍼灸師
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【第43回】森 憲正 先生

2015年6月3日
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『統合医療との出会い』

森 憲正 (モリ ノリマサ)
宮崎大学名誉教授
日本統合医療学会宮崎支部長

 統合医療を意識する契機となったのは中川米造監修「医療概論」との出会いであったと思う。それまでは西洋医学にすっかり埋没した考え方で、研究、教育を業とし、医療に従事してきた。

 平成17年、看護師と鍼灸師を養成する総合医療専門学校を立ち上げ、両学科の医療概論の講義を担当した。同じ国家資格の医療職であっても看護師養成は西洋医学に、鍼灸師の養成は東洋医学に準拠している。医療概論の内容も異なっていることに気付き、初年度に躓いた。鍼灸学科の教科書に採用した上記の医療概論を紐解き、熟読しているうちに、これまで学んできた医療概論とは趣が異なり、医療と医学の定義の曖昧さが原因の一つと認識して、初年度の両学科の医療概論の混乱を正すことが出来た。初年度の学生には気の毒なことをしたと反省しきりである。これが筆者の統合医療への入門の切っ掛けとなった。患者のためとか、医療に対する疑問などという高邁な動機ではなかったことが恥ずかしい。

 現行の制度的医学は医療の一部を占めているに過ぎず、他の大部分は代替・補完と称される医療で占められている。

 古代ギリシャ医学が欧州に導入され、そこで発達していた自然科学、特に物理学、化学の思想に触れ、17世紀には既に疾病を含む身体現象を物理学的、或は化学的に解明出来るとして物理医学派、化学医学派に分かれていたという。この自然科学的医学の考え方は現在の医学、医療の研究に大きく影響している。

 明治維新後、明治政府は範をドイツ医学に求め、現行の医療制度の基礎を築いた。以後、西洋医学以外の医療は異端視され、阻害されてきた。自然科学化した西洋医学は益々身体を細分化、可視化して、疾患のみを追求し、病人を見ない医療になったといわれている。
勿論、西洋医学を主軸として進歩してきた制度的医療の恩恵は計り知れず、筆者自身もそのお蔭で現在まで存命出来ていると信じている。二種の初期がん、甲状腺疾患の治療がなかったら、とっくにこの世から去っていたと思う。しかし進歩した現行制度的医療による治療を受ける患者には身体の外に、精神、霊もあることが忘れられている。

西洋医学が目覚ましい進歩を遂げている現在でも、医療と医学の定義は昔のまま曖昧に使用されている。その進歩に応じた医学と医療をより判りやすいように定義されることが望まれる。

【略歴】
昭和30年3月 熊本大学医学部卒業
   35年3月 熊本大学大学院医学研究科修了
   35年11月 熊本大学産婦人科学助手(医学部)
   37年9〜39年10月 米国オレゴン大学医学部産婦人科学教室へ留学
   50年4月 宮崎医科大学教授(医学部)

平成2年5月 宮崎医科大学副学長、大学附属病院長
   8年3月 任期満了により宮崎医科大学退職
   8年7月 宮崎医科大学名誉教授
   11年4月 九州保健福祉大学教授、附属図書館長
   14年4月 九州保健福祉大学副学長
   16年1月 九州保健福祉大学総合医療専門学校校長
   23年3月 九州保健福祉大学総合医療専門学校退職
   23年7月 宮崎統合医療研究会代表世話人
   24年4月 日本統合医療学会宮崎支部長
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【第42回】鈴木 八重子 先生

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『古典に秘められた健康への手がかり』


鈴木 八重子 (スズキヤエコ)
(社)日本ヨーガ療法学会、認定ヨーガ療法士
日本アーユルヴェーダ学会、セルフケアアドバイサー

アーユル・ヴェーダと云うインドの伝統医学を日本に取り入れたのは、大阪大学衛生学の丸山 博先生を中心にした、ほんの数人の先生がたの集まりだった。かつて、インドを訪れた桜沢如一先生が、現地から「インドには、面白い伝統医学(?)があるよ」と云えて来た情報により、丸山 博先生を中心に、幡井 勉先生達のグループがインドを訪れ、其の情報を日本に持ち帰ったという事実が、日本におけるアーユルヴェーダ研究の発端と聞き及んでいる。 

1981年に開催された第3回アーユルヴェーダ研究総会で丸山先生が『「いのち」の認識を深めるために』と云うテーマで講演をされている。
読売新聞1981年9月8日には、『「人は 身体・心・魂が一体」現代医学の欠陥を見直す風潮』のテーマで、この研究総会の状況が記載されている。更に、『この会のメンバーは、インド学者は当然、生物学者、医師、僧職、教師から一般人、理論物理学者迄いる。面白いのは、近代医学の洗礼を受けた医学者が中核を占めている事だ』と記載されている。(アーユルヴェーダ研究誌、第11号より抜粋)
1980年代にすでに、この場では、現代医学と伝統医学の統合医療の必要性を模索し始めている様子を呈している

現在、日本ヨーガ療法学会では、認定ヨーガ療法士たちが、認知症施設、依存症施設、精神病施設、ホスピス施設等 その他、現代社会が抱えている問題の、多くの方がたに向けて、ヨーガ療法を行っており好評をいただいている。医療機関の協力をいただきながら、各種研究も進んでいる。

ヨーガ療法のベースとなり支えているものは、伝統的ヨーガの手法と、タイティ―リヤ・ウパニシャッドの身体五層説、カタ・ウパニシャッドの人間構造論である。更に、見立として、アーユルヴェーダの内科的古典「チャラカ本集」、ヨーガの古典「ヨーガスートラ」「バガヴァット・ギーター」等の記述事項の中から、ヨーガ療法における、アセスメントに該当する部分を引き出し、カウンセリングに活用をしている。
3000年も昔から、消え去ることなく、多くの人々に営々と伝えられてきた伝統医学や古典経典群をひも解くことで、現代人が背負っている苦しみから、解放される秘訣を引きだす事が出来る。

その時代時代の人々が、健やかに生きるためのヒントが含まれていた古典や伝統医学の叡智は、引き継がれ、現代も輝きを失うことなく、未来の人々の健康の糸を紡いでいく事になるのだろう。

【略歴】
(社)日本統合医療学会代議員
(社)日本ヨーガ療法学会常任理事
アーユルヴェーダ学会理事
東京アーユルヴェーダ研究会世話人
蒲田ヨーガ療法研究所主宰
現在、地域の高齢者、精神病疾患者等を対象にヨーガ療法を指導

タグ:ヨーガ
posted by IMJ2015事務局 at 16:30 | @統合医療との出会い