【第8回】板村 論子 先生

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『私と統合医療』


板村 論子 (イタムラ ロンコ)
医療法人財団帯津三敬会 帯津三敬塾クリニック 理事長
一般社団法人日本ホメオパシー医学会 専務理事


今、アリゾナ大学の統合医療センターArizona Center for Integrative Medicine(AzCIM) で行われている統合医療フェローシップ・プログラムの卒業式に参加するためにアリゾナにいます。 このフェローシップはDr.Andrew Weilが1994年に始め、今年で20年になります。私がホメオパシーを学び始めた2000年頃からこのプログラムに興味を持っていたのですが、やっと(円高も追い風となって)受講することができました。ホメオパシーは従来の医療における"疾患"を中心とする医学モデルではなく、病気の"人"の回復を手助けするホリスティックな医療です。精神科医のアーサー・クライマンは"病いの語り"の中で、病いillnessは人間に本質的な経験である症状や患うこと(suffering)の経験であり、一方疾患disease は治療者の視点(近代西洋医学)からみた問題であり、病いを障害の理論に特有の表現で作り直す際に生み出されるものと述べています。近代西洋医学にもとづいた従来の医療は疾患、特定病因論のもとに治療が行われ、医療を供給する側の視点に立った医療システムです(医学モデル)。いままでと視点をかえた医療の受け手である"人"を中心とした医療システムが統合医療だと私は考えています。統合医療は人の人生において、生老病死、健康・未病・病気のさまざまな状態で関わってきます。統合医療とは、これまでの西洋医学に基づいた従来の医療の枠を超えて、種々の相補・代替医療、生きていくために不可欠な衣・食・住、さらには自然環境や経済・社会システムをも包含する医療システムです。フェローシップを卒業するにあたり、病気の"人"の回復を手助けする医療のホメオパシーから、"人"が "生きる"うえで必要な食・運動・コミュニュケーションを含めた統合医療の重要性をより感じるようになりました。まだまだ日本では統合医療は理解されていない状況ですが、統合医療女性の会の活動を通して、今求められている医療、私たちが実践すべき医療が統合医療であることを一人でも多くの人に伝えていきたいと思っています。

【略歴】
関西医科大学卒業後、京都大学大学院博士課程修了、医学博士。
マウントシナイ医科大学留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬病院を経て現職。
第19回日本統合医療学会プログラム委員
タグ:医師
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【第5回】田中 マキ子 先生

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『私と統合医療』


田中 マキ子 (タナカ マキコ)
山口県立大学看護栄養学部教授 
山口県立大学大学院健康福祉学研究科長 
       
  
 私は、看護職として30数年のキャリアを有しますが、近代科学の成果としての医学への信頼はもとより、伝統医学や相補・代替医療として称される統合医療に大変興味を持つと同時に期待をしています。

 子どもの頃、こんな経験をしました。叔母が、料理中、腕にやけどをしました。我慢強い叔母は、家族に隠し自分でやけどの手当をしていました。小麦粉を練って、腕にあて、熱を取っていたのです。やり方次第では、感染をおこし、皮膚が大変な状況になって・・・等々、言えばきりがなく危険な行為かもしれません。しかし「昔の人は、みんなこうしていた」と、自分で自分の傷を淡々と叔母は手当しておりました。

 できものができやすい人は、ビワの種を煎じて飲むや、疲れがひどい時には石菖根(せきしょうこん=菖蒲の根)を煎じて飲むと、疲労回復・腰痛・物忘れに効果するといわれます。5月になると、この菖蒲の根をよく取りに行ったものです。また、ダイエットがなかなか思うように進まない時には、新月の夜にリセットします。新月の日の夕食を可能であれば欠食するのです。欠食が難しければスープなどで我慢します。日ごろは、夜から朝にかけて500gくらいしか減らない体重が、一気に1kg以上落ちます。こうした素晴らしい医療・癒しの方法がありながらも、イリッチ注1)が指摘する「医療化」の台頭に示されるように、人間が本来持つ癒しの力が減退しているのではないかと心配になります。

私が大学院生の時、夜間救急のアルバイトをしていました。ある夜、幼子を抱えた母親と父親そして祖父母の4人が、心配顔で受診に来られました。診察後、医師は風邪と伝え薬の処方をされました。その薬を見て母親は、「この薬は持っています」と答えたのです。私は不審に思い「どうして持っているのですか?」と尋ねると、母親は「ここは、3件目の受診ですから(同日に3つの医療機関を受診していた)」と答えました。

 こうした現実が、問題と言いたいのではありません。統合医療についての関心や知識があったら、もっと他の対応や処置があったかも知れないと思うのです。自己判断に基づく経験的な対応の弊害はもちろんありますが、安心で健全な毎日を送るために、根拠も明示され、ある意味身近になっている統合医療に触れ、考えてみるのもよいのではないでしょうか。

注1)
イヴァン イリッチが、「脱病院化社会-医療の限界-」の中で、現代の医療システムが「医源病」として人々の健康を脅かしているのではないかと、医療化社会を批判している。

【略歴】
専門は、老年看護学、ポジショニング学です。
九州大学大学院比較社会文化研究科において
「看護婦のBurnout現象からみる医療の問題」で博士号を取得しました。
最近では、褥瘡ケア他「ポジショニング学」を極めています。 
 第19回日本統合医療学会プログラム委員

タグ:看護師
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