【第53回】赤木 純児 先生

2015年9月2日赤木先生.jpg

「Evidence-based 統合医療の樹立のために」


赤木 純児(アカギ ジュンジ)
玉名地域保健医療センター院長
日本統合医療学会熊本県支部長



本年5月に、日本統合医療学会九州ブロック大会を主催し、230名の医療関係者に参加して頂き、大変盛況のうちに終了することができました。今回は、私が日頃行っている統合医療(免疫治療、ハイパーサーミア、漢方治療、CART療法)に関して、それぞれの専門家に講演して頂きました。特に、免疫治療に関しては、その免疫的指標という意味で、私は統合医療おいて大きな期待を寄せています。

 統合医療は、多種多様なものがありますが、その共通のコンセプトは、西洋医学では完全に無視されている、自然治癒力の強化ではないかと考えます。しかし、自然治癒力を客観的な数字などで表現することは現在の医学では不可能なのが現状です。私は、自然治癒力≒免疫力と解釈して、免疫力を評価することで自然治癒力もかなりの確かさで評価できるのではないかと考えています。統合医療の発展のためには、自然治癒力・免疫力の判定方法を確立する必要があります。この中でも最も簡便な方法として、我々が用いている好中球/リンパ球比があります。この値は、統計部癌、乳がん、肺癌、胃癌、肝癌、大腸癌などで、予後予測因子になることが報告されています。我々が行なっている低容量化学療法併用温熱療法の症例でのNLRは、カットオフ値が2.6で、NLR>2.6の症例はNLR<2.6に比して予後不良でした。また、CR, PR, SDになる症例のほとんどは、治療後にNLRが低下した症例でした。このNLR値は癌患者の免疫抑制に関与しているMDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)とよく相関することが知られており、この意味でNLRは癌患者の予後を反映していると考えらます。

 一方、我々が用いているもう一つの免疫パラメータである、CD27/CD70/CD57系は、T細胞上でcostimulatory factorとして免疫調整に重要な役割を果たしているCD28/CTLA4/CD80/CD86と同様に、やはりcostimulatory factorとして抗腫瘍免疫と免疫寛容の両者を制御しているということで、最近注目を集めています。CD27は、TNF receptor superfamilyに属しており、T細胞のシグナル伝達に関与していることが知られています。我々は、CD27/CD70/CD57系で、CD27+CD57? T細胞が増加する場合には予後不良に働き、CD27?CD57+ T細胞が増加する場合には予後良好に働くことを報告してきました。やはり、CR,PR, SDになる症例のほとんどが、治療後に、CD27+CD57? T細胞が減少し、CD27?CD57+ T細胞が増加する症例でした。Treg(CTLA4)は我々の系では予後との相関は認められませんでした。

 このように、末梢血中リンパ球のCD27/CD57の発現、そしてNLRを測定することによって、患者の免疫状態を把握することができると考えます。

  今後の課題として、これらの免疫判定パラメーターを用いて、例えば、客観的な効果判定が困難である、ヨガ療法や瞑想療法などの治療施行前後でこれらのパラメーターに変化が出るのかどうかを調べていきたいと考えています。

【略歴】
1983年3月  宮崎医科大学卒業
1983年4月  熊本大学医学部附属病院第二外科入局
1984年10月  熊本市民病院(外科、麻酔)
1989年3月  熊本大学医学研究科博士課程修了
1989年4月  国立宮崎病院
1991年7月  熊本大学医学部附属病院第二外科
1992年11月  米国NIH(NCI 米国国立がん研究所)
       (Tumor Immunolgy & Biology(Lab), Dr Schlom)
1995年4月  熊本大学医学部附属病院第二外科
1998年7月  玉名地域保健医療センター外科部長
2000年6月  国立病院機構熊本南病院診療部長
2010年4月  玉名地域保健医療センター院長

タグ:医師
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【第52回】北 虎哲 先生

2015年8月14日○052北 虎哲2.jpg


『己を知ることが第一歩』



北 虎哲(キタ コテツ)
(公社)日本鍼灸師会青年委員会副委員長
(公社)富山県鍼灸マッサージ師会理事 組織・青年部長
富山鍼灸学会 総務部長

 本年の4月に、私が所属する(公社)富山県鍼灸マッサージ師会の定期学術講習会として、砺波総合病院における東洋医学科(鍼灸・漢方)と他科との連携、外部鍼灸院との地域連携の講演が行われました。
この中で、院内での鍼灸の提供にはベッドの数はもちろん、通院距離などの問題から限界がある為、出来れば地域中核病院と開業医院の関係の様に、砺波総合病院東洋医学科と地域の鍼灸院の間で地域連携ができたらありがたいという事を東洋医学科主任の医師から仰って頂きました。

 現状は、病院・医師の側には鍼灸師・鍼灸院の情報がまるでなく、同科中心で行っている勉強会を通じて知り合った近隣の鍼灸師に依頼をする程度のことしか出来ずまだまだ課題が多いとのことでした。

 これに対して、では地元の業団ですぐに対応出来ることはなんだろうか?と考えましたが、会員名簿をお渡しして鍼灸院を紹介している業団のWebサイトのご利用を薦める程度のことしか出来ないという事を少し残念に感じました。

 この例はまだまだ希だとは思いますが、これから10年掛けて地域包括ケアシステムが構築されていく中で、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師が、介護予防運動の指導をする程度の関わりしかもてない状況をこのまま業団が座視する事は無いはずです。

 必ず、本業である"鍼灸マッサージによるQOLの改善"をベースにした介護予防やさらにいえば寝たきりからの回復などにも大きく貢献していける事をアピールし、それらの役割を担う事を求めていくことになる筈です。

現在鍼灸の受療率はデータの上では5%あまりと言われます。
 なぜこれほど受療率が低いか?現場で患者さんに接していて言われる事は「どの鍼灸院に行けば良いか解らない」「良い鍼灸院が近くにない(知らない)」ということです。

そのような情報不足の状況から患者さんのニーズと鍼灸院が提供している施術のマッチングのミスが起こっている事が大きな原因ではないかと私は思っています。

 また、養成学校の乱立により鍼灸師の数は倍以上にふくれあがってはいますが、それでもまだまだ十分な数の鍼灸院が日本全国に遍在しているとは言えません。

 結果として「受けたい施術を通院に便利な地域で受けられない」というミスマッチが生じ、さらに自分のニーズにマッチする鍼灸院を見つける努力やリスクは患者さん側に押しつけてしまっている現状である事が、現在の低受療率という結果を招いているのではないかと思います。

 では、それを解消するには鍼灸業団はどうしたら良いのか?
業団の外の医療者との連携をとれる人材の育成や交流という事も非常に大切なことですが、もう一つ大切なことは、まず第一に鍼灸マッサージ業団として自分達は何をもっているのか?自分達の中には何ができる人がいるのか?を正確にきめ細かく、さらにリアルタイムの状況を知っておくことがとても大切な事だと思います。
提供できる物がリアルタイムで把握できていなければ、求められた際・また提案する際にミスマッチを起こしてしまいます。

 その為には、やはり業団の組織統合を進め、太い根幹となるネットワークを作ることが大切な事だと思います。窓口を統合し管理業務を統合省力化し、同業者の多くが所属し、また活かされていく組織作りです。

 そうして、医療・介護職種と有機的に連携を計ることで、前述のマッチングのミスをなくし、鍼灸マッサージの恩恵を受けることができる患者さんに、十分にその恩恵が行き渡る様にしてゆくこと、そういう体制を業団として用意していくことが大切だと思います。

統合医療の中で、鍼灸マッサージが求められた際に、専門職として最適な形で十分に提供ができる事。"国民の健康の為に鍼灸マッサージを活かしてもらいたい"との想いを叶えるには、活かしてもらいやすいように自分自身の情報を整理して提供しやすく状況を作っておくことが、地味ですはありますが大切な土壌作りではないかと考えます。

【略歴】
 昭和49年(1974年)6月生まれ。
 平成9年 呉竹学園「東京医療専門学校」鍼灸科 卒業。
 平成9年 はり師・きゅう師国家試験合格。はり師・きゅう師免許取得。
 平成13年 本町北はり灸院を開業。

 (公社)日本鍼灸師会青年委員会副委員長
 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会理事 組織・青年部長
 富山鍼灸学会 総務部長


タグ:鍼灸師
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【第48回】竹谷内 啓介 先生

048竹谷内 啓介.jpg2015年7月8日


『統合医療における
     カイロプラクティック業界の役割』



竹谷内啓介 (タケヤチ ケイスケ)
一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC) 会長


「統合医療」は西洋医学と代替医療を組み合わせた患者中心の広義の医療であると私は捉えています。統合医療は、病気治療の「メディカルケア」よりも病気予防や健康増進を目的とした「ヘルスケア」に焦点をあてています。

現在、日本では医師や看護師などの医療従事者と代替医療提供者が協力する環境が整備されておらず、患者の立場からすると西洋医学(現代医療)以外の選択肢として十分な情報をもとに代替医療を選ぶ機会はほとんどありません。そのため統合医療の普及には、医療従事者の代替医療への理解と協力が必要だと考えています。

カイロプラクティックは19世紀後半アメリカで発祥した脊椎マニピュレーションを用いて神経機能を回復させる徒手療法であり、世界90カ国以上に普及しています。WHO(世界保健機関)は(補完)代替医療として認知し、カイロプラクティックの専門教育と臨床業務についてのガイドラインを2005年に発行しています。多くの国々では大学でカイロプラクティックの専門科目を学んだのち資格を取得します。この資格は脊椎マニピュレーションの施術以外にもX線の撮影や筋骨格系に関する診断が認められています。一方、我が国では遅れを取り未だに国家資格ではありません。

日本カイロプラクターズ協会(JAC)では患者の安全を守る観点から、自主規制を業界内で周知させていくことを決定しました。2012年に独立行政法人国民生活センターが「手技による医業類似行為の危害−整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も−」の報告書を発表し、センターから要請を受けた当会はカイロプラクティックの広告と安全性に関するガイドラインを作成しました。またWHOによる教育基準を満たしていない施術者の安全性を向上させる目的で医学知識やリスクマネジメントを重視した「安全教育プログラム」を開講しました。適正な教育基準を満たした施術者に対しては、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)が毎年実施する登録試験に合格した者を登録し、定期的に厚生労働省へ登録者名簿を提出しています。 

こうしたカイロプラクティック業界の取り組みが、業界全体の安全性と倫理を底上げすることにつながります。統合医療を構成する未整備の代替医療を適切な基準で制度化することは、統合医療の信用を高めることに大変役立つと考えています。

【略歴】
2002年 オーストラリアRMIT大学カイロプラクティック学科卒業
2007年 アジア太平洋カイロプラクターズ連合副会長
2009年 国際カイロプラクティック試験委員会アジア太平洋地区代表
2011年 東京カイロプラクティック院長
2013年 一般社団法人日本カイロプラクターズ協会会長

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