【第7回】相原 由花 先生

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『看護から見た統合医療』


相原 由花(アイハラ ユカ)
ホリスティックケアプロフェショナルスクール学院長
兵庫県立大学大学院看護学研究科博士後期課程がん治療学専攻

私は2000年に関西科大学心療内科学講座の「統合医療プロジェクト」に研究員として参加したのが統合医療との出会いでした。様々な補完代替療法家と医師とで結成されており、まさしく西洋医学と補完代替医療が統合をし、一人ひとりの患者に対してオーダーメイドな治療やケアを行うことを目的にした取り組みでした。西洋医学が適応しない、あるいは十分ではないとき、各代替療法家が自分の専門から治療やケアの方法を提示し、患者の了解を得てそれらの方法を提供していきます。慢性疼痛患者がアロママッサージを受け、徐々に痛みを手放していく姿を見るのはとてもうれしいものでした。後に私はがん患者のケアを担当するようになったのですが、その時には「もう治療がないって。見捨てられたと思ってた。でもこんな方法があったなんて、もっと早く知りたかった。」と言われ、その言葉がまだ胸に残っています。

臨床経験の中で、私は次第に患者にとって必要なタイミングに必要なアロマケアを提供できるよう、看護師にアロマセラピーを行ってほしいと思うようになり、思い切って看護の世界に飛び込みました。しかし今までのやり方では打破できない問題に直面してしまうことになったのです。

 それは看護自体が「ホリスティック(全人的)」であり、ケアリングを本質にもち、患者の心・体・魂を癒し、健康だけでなく環境を整えるといった概念を持っているものであるため、補完代替療法がもつ本質と重なる部分が非常に多く、西洋医学との統合のようにお互い役割を分けてそれぞれが実践していくというスタイルが「看護と補完代替療法」には当てはまらないのです。そのためアロマセラピーに対する看護師の関心は高いのですが、いざ看護領域で実践しようとすると混乱が生まれ、「アロマよりも看護を」と言われてしまうのです。

看護領域で行う場合は、アロマセラピーを看護介入の一つとして行うことが必要だと私は思っています。そのためには、患者の世界観を実現することを目的に看護理論や看護手順に合わせ、病気ではなく「人を看る」という看護の枠組みにアロマセラピーを組み入れることがポイントになります。「患者にアロマセラピーをする」のではなく、「アロマセラピーを使って看護をする」という考え方でアプローチ方法を組み立て直すことが、看護における統合医療になるのではないかと考えます。

【略歴】
2000年英国ITEC認定アロマセラピストとなり、
関西医科大学心療内科学講座研究員として臨床と研究を開始。
2010年看護師、保健師を取得し、2009年より潟zリスティックケアジャパンを
設立し臨床アロマセラピストの育成を行う 
 第19回日本統合医療学会プログラム委員

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【第4回】西田 輝夫 先生

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『感覚器と統合医療』


西田 輝夫 (ニシダ テルオ)
山口大学 名誉教授
         

今日,日本は世界で最も長寿(人生の量)を楽しめる国です。昭和22年の統計では,平均寿命は50歳でした。しかし60年以上を経た今日では,男性も女性も80歳以上がこの国での平均寿命となりました。このような長寿国となった背景には,行政による健康保険制度などの充実,社会の衛生環境の改善と,生命を維持するための医学の進歩が大きく貢献しました。人生の量が満たされれば,より充実した人生の質を楽しむ社会が求められてきます。より豊かな人生とは,個人としての健康に加え,社会と十分な関わりを持ち生活していくことではないかと考えます。

私たちを取り巻く環境は,自然環境,社会環境に限らず全てが常に変動しています。このような環境の中で,ある一定の恒常性を維持して豊かな人生を楽しむためには,これらの変動を的確に感知する必要があります。私たち人間は,五感(+第六感)を用いて,様々な自分を取り巻く環境の変化を感じ取り,適切な行動を選択しています。その中でも,見ると言うこと(視覚)により外部情報の80%を手に入れており,見えるということが当たり前のように感じますが,極めて重要です。

円錐角膜という角膜(黒目)の形が円錐状に突出し,物が二重三重に歪んで見え、視力が低下する病気があります。15歳から25歳のいわゆる思春期に発症し進行します。変形している角膜を切り出し,アイバンクから提供された善意の角膜を移植することが,基本的な治療法です。ある日の外来で,角膜移植により視力を取り戻した患者さんが,「先生,私結婚することになりました。」ととても明るい顔で告げてくれました。視力が悪いために今まで自分に自信が持てず,プロポーズを受けていたにもかかわらず結婚に踏み切ることが出来なかったそうです。角膜を提供して下さった方のお陰で視力を取り戻し,ご自分の人生への自信を再び取り戻し,プロポーズを受けられたとのことでした。

目の病気を治して差し上げることは,同時にその方の人生に再び明るさと社会との関わりを取り戻す機会が生まれることでもあります。ここに感覚器医療の大切さがあると考えます。長い間,眼科医療に携わり,単に目の病から開放すると言うことだけではなく,一人の人間として全人的な関わりを患者さんと持つことの重要性を学んできました。病気に対峙したとき,今日の最新・最善の医療技術を用いることは当然大切な基本です。統合医療という考え方は,病んだ臓器や組織を修復させるのみならず,病気により引き起こされた様々な症状を緩和し,人生の流れをどれだけ豊かに出来るかということを求める医療であります。病(やまい)の治癒のその先に楽しめる豊かな人生が生まれるような医療を私たちはさらに求めていくことが大切だと考えます。

【略歴】
1971年 大阪大学医学部卒業
1971年 大阪大学蛋白質研究所代謝部門
1974年 愛媛大学医学部第1生化学教室 助手
1977年 スキペンス眼研究所(ボストン) 研究員
1981年 大阪大学医学部眼科学教室 助手
1984年 近畿大学医学部眼科学教室 講師
1993年 山口大学医学部眼科学教室 教授
2010年 山口大学 理事・副学長
2012年 山口大学名誉教授
2014年 医療法人社団水生会柴田病院 顧問
第19回日本統合医療学会 プログラム委員会 副委員長
タグ:医師
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【第3回】久保 千春 先生

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『統合医療における心身医療の役割』


久保 千春 (クボ チハル)
九州大学 総長

         
 現代医療は診断や治療において大きく進歩してきています。 
1)高度先進治療:移植医療、遺伝子治療、再生医療、ロボット手術、重粒子線治療など
2)新薬の開発:分子標的治療薬、抗がん薬、高血圧治療薬、高脂血症治療薬など 
3)診断機器の開発:CT、f-MRI、PET、SPECTなど
 しかし、医療が進歩しているにも関わらず、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や心身症、不安症、うつ病などのストレス関連疾患は増加しています。また、現在の日本は少子高齢化、核家族化、過疎化などにより課題も多く見られます。

1)少子高齢化による老年病の増加
2)ストレス増加によるストレス関連疾患の増加
3)長寿社会であるがQOLは低い
4)介護の問題
5)医療費の高騰
6)西洋医学のみの限界

 このようなことから、全人的医療、地域での支え合い、補完代替医療を含めた統合医療、予防医療、などが期待されてきています。
 ところで、心身医療は1)身体・心理・社会・実存の側面からみる全人的医療、2)心身相関を基本:精神・神経・内分泌・免疫系の生体反応の観点、3)患者中心の医療、4)チーム医療、などです。心身医学は西洋医学を出発点として、第1期:神経症についての心身相関研究、第2期:身体疾患(いわゆる心身症)についての心身相関研究、第3期:生物心理社会的モデルに立脚した全人的医療への発展、となってきています。

 さて、統合医療は近代西洋医学を中心として、伝統医学や代替医療(鍼、マッサージ、食事療法、ハーブ、音楽療法など)を統合して、全人的医療を患者中心に行うものです。その基本は1)患者中心、2)全人的医療、3)治療のみならず、健康予防までの医療です。このような点は心身医療と共通の部分があります。
 今後の新たな医療システムにおいて心身医学・心身医療は統合医療の土台として機能していく必要があると思われます。

【略歴】
1973年 九州大学医学部卒業 
              同病院心療内科入局
1982年 オクラホマ医学研究所(アメリカ)へ留学
1984年 国立療養書南福岡病院内科医長
1993年 九州大学医学部診療内科教授
2000年 九州大学大学院医学研究院心身医学教授
2008年 九州大学病院長
2014年 10月 九州大学 総長
第19回日本統合医療学会 プログラム委員長
タグ:医師
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