【第21回】金谷 浩一郎 先生

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『統合医療に期待していること』


金谷 浩一郎 (カナヤ コウイチロウ)
医療法人 浩然会
耳鼻咽喉科かめやまクリニック 院長


 "Integrated medical treatment"、"alternative medicine"、あるいは、"complementary medicine"、これらの用語を、最初に使い始めたのは、いずれもニューソート系の"ユニティ派教会(Unity church)であるとされています(#1)。ニューソート(New Thought)は、19世紀アメリカで起こった思想運動で、キリスト教の伝統的な善悪対立概念を脱して、自然に遍在する知性や人間の本質が神聖であることなどを主概念とするものです。渡部昇一氏は、ニューソート系の思想家ウェイン・ダイアーの一連の著作を翻訳出版し、それらの緒言でニューソートについて概説しています。そのうち1冊のなかで、「ニューソートとは、世の中を二元的に見て、物質的なものに対する霊的なものの卓越性を主張する考え方」であり、また、ニューソートの始祖とされるエマソンについて、「アカデミックな哲学史では重要視されていないが、実質上のアメリカ精神といえる」と述べています(#2)。ニューソートは、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」等に代表される自己啓発書のルーツとなっている思想でもあります。

 統合医療を考えていく場合、やはり、その発生の母体となっている思想についても考察していく必要があると考えます。たとえば、ある種の健康食品や漢方薬に、既存の西洋医学の薬剤にはない特別な効果が認められたとしても、ある物質の人体に対する科学的な効果を治療に応用するという意味でいえば、既存の西洋医学と本質的に何かが異なるわけではありません。統合という意味は、科学に基づく既存の医学を、もちろん否定するわけではなく、それに欠落している何かをプラスするという意味であろうと理解しています。その既存の医学に欠落している何か、それが、第19回日本統合医療学会(IMJ2015山口大会)のサブテーマとして掲げられている「ヒトはBody,Mind,Spiritの存在」ではないかと考えます。そのような意味で、私は、今回の統合医療学会に大変期待し、また会に参加できることを楽しみにしております。

 #1 Glenn Mosley(2006)『New Thought, Ancient Wisdom: The History and Future of the New Thought Movement』Templeton Foundation Press.

 #2 ウェイン・W・ダイアー著、渡部昇一訳(1990)『小さな自分で一生を終わるな!』株式会社三笠書房

【略歴】
1987年 長崎大学医学部卒業
1987年 山口大学耳鼻咽喉科学教室 入局
1994年 小野田市立病院耳鼻咽喉科 医長
1997年 厚生連長門総合病院耳鼻咽喉科 部長
1998年 山口大学学位授与(医学博士)
2001年 済生会山口総合病院耳鼻咽喉科 部長
2006年 耳鼻咽喉科かめやまクリニック 開設
       現在に至る
タグ:医師
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【第20回】関 隆志 先生

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『統合医療にできること』


 関 骼u (セキ タカシ)
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター
高齢者高次脳医学研究部門 講師 

 補完代替医療では治療効果があった例が宣伝に利用されることはあっても、効果のなかった例が検討の俎上に載せられることは少ない。どのような症例に適用となりどのような症例には適用にならないのかがわからない治療方法が多い。統合医療にできることは大きく三つある。一つは、チーム医療の中に伝統医学を含む補完代替医療(Traditional medicine and Complementary and Alternative Medicine; TCAM)を取り込むこと。もう一つは、伝統医学の知見を統合し、現代の医学においていままで気づかれなかった病気の原因を解明し治療方法を開発するヒントとすること。そして、統合された伝統医学の知見を用いてあまた存在する補完代替医療の効果を最大限に引き出すためにそれぞれの補完代替医療の適用をみいだすことである。

 TCAMは現代西洋医学の医療の中でこそ生きてくる。さまざまな検査などにより効果や安全性の評価が可能だからである。TCAMがもつ心身・疾病に対する視座は現代西洋医学と大きく異なるものがある。そこには、病気の原因を発見し難治性疾患の新たな治療方法を開発するヒントが隠れているのではないか。現代の科学の手法で再検討することにより、TCAMを現代の医学を発展させるヒントとして活用することができるであろう。また、伝統医学理論は種々の補完代替医療を統合・体系化する可能性を秘めている。統合・体系化は個々の補完代替医療の適用を見いだし、最大限に活かすことにつながるだろう。

【略歴】
東北大学医学部附属病院老年・呼吸器内科医員、
東北大学大学院医学系研究科先進漢方治療医学講座講師、
同高齢者高次脳医学講座講師を経て現職。

タグ:医師
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【第19回】塩田 清二 先生

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『統合医療に期待していること』

塩田 清二 (シオタ セイジ)
昭和大学医学部顕微解剖学教室 教授 


世界に類を見ない超高齢化社会が現実となりつつある日本において、いかに健康で長寿を全うするかということは、医療の世界のみならず、大変大きな社会問題であるといってよいでしょう。また毎年1兆円づつ増加する医療費の削減をどのようにすべきか、これは早急に解決すべき課題です。統合医療は、まさにこの点において大変重要な役割を演じることは間違いのないことだと思われます。生活習慣病、がん、認知症、精神疾患などの疾患について統合医療がどのように役立つか、その真価が今まさに問われているといってよいでしょう。統合医療は、疾病の予防に力点を置いていることから、医療費の軽減や削減に大きな役割を演じることは間違いありません。これは日本のみならず、世界各国の抱える重要な課題であり、統合医療が今後益々医療の中で重要性をもっていくことは間違いないことだと思われます。

ところで、平均寿命と健康寿命にはおよそ10年のギャップのあることはよく知られた事実です。いかに健康で長寿を全うするかということは、大変重要なことです。私が属している学会はアロマセラピー学会です。アロマセラピーは、単に香りを楽しむだけにとどまらず、精油のもつ様々な生理・薬理作用を利用して医療の場で臨床応用されています。とくに、認知症の予防・改善、がんの終末期医療、緩和医療、更年期障害の治療など、多方面で使われています。アロマセラピーの研究は、基礎・臨床医学研究者のみに限定されず、看護、介護、薬学、化学などの広い分野に関わっています。今後のアロマの研究課題としては、ヒトでの臨床効果についての医学的見地からみた実証試験が大変重要であると考えています。それは統合医療においても同じことだと思います。従来の西洋医学の研究者が、違和感なく統合医療の研究結果を受け入れられるような環境が出来つつあります。その流れに沿った実証的研究が強くのぞまれます。

今後の統合医療に期待していることは、統合医療学会の会員が他の関係学会と深く交流を行い、いろいろな立場の人たちの意見や考え方を学び、それを現場で生かして行くことです。また、世界の国々において実践されている統合医療を学び、日本に即した統合医療を考えて実現すること、それこそが日本の統合医療がさらに大きく飛躍し発展していくために必要なことであると思われます。

【略歴】
早稲田大学教育学部生物学科卒業、医学博士(昭和大学)
昭和大学医学部解剖学教室教授
米国チューレン大学医学部兼任教授
VIP/PACAP およびRegulatory Peptides 国際学会理事
アロマセラピー学会理事長

タグ:アロマ
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