【第16回】鈴木 洋通 先生

鈴木洋通.jpg


『統合医療に期待していること』


鈴木 洋通 (スズキ ヒロミチ)
埼玉医科大学腎臓内科 教授

はじめに
 統合医療という言葉は比較的古くから使われており,英語はIntegrative medicineがそれにあたると思われる.Integrative medicineとは別にComplementary and alternative medicine補完代替医療という言葉も用いられている.これがそれぞれに比較的緩い定義で用いられている.敢えていうと2つの異なった概念の物を1つにするという意味で統合医療という言葉が用いられているといってもよい.すなわち,西洋医学と東洋医学の統合,より広くは科学に基づいた西洋医学と伝統的に各地に伝わっている医学との統合といった具合である.この様な概念の統合を試みることも哲学では重要かもしれないが,医療という実践を通して哲学へと止揚されないと実体を伴わないものとなってしまう可能性が高い.医学が本来対象としてきたものは人間が表現する痛み,かゆみといった感覚的不快,恐れや不安といった感情のゆらぎ,それに加えて日々の生活に支障をきたす心肺機能や神経の障害によってもたらせる運動機能の不全,これらを臓器別に原因を突きとめ,それらに外科的・内科的,すなわち切除や結合,薬物による修復調節を図ってきたのが西洋医学とされている.

 一方この様な方法論は,伝統医学とされている古くからの医療はほぼ2000年前位に一つの体系として完成され,以後はその成果を伝承することで使われてきた.翻って医療の基本は何かというと何らかの変調をきたしていることがあったとしても,それをより自然に通常に近づけることで,日々の生活を送ることが出来る様にすることではないだろうか.とくにその様な気運が西欧諸国や本邦で行ってきた背景には,人口の高齢化と生活習慣の急激な変化がもたらしている一つの社会現象として捉えてもよいかもしれない.一方それでは今後,現在の医療体系では誰もが先行かなくなるという漠然とした不安感がひとつの原動力となっていると思われる.

ここでは,それらを踏まえて一つの事象へのアプローチをいわゆる西洋的,東洋的にみてどの様に考えていくのかが統合医療の目指す道ではないかと考えている。

【略歴】
1975年に北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部内科で研修、米国クリ−ブランドクリニック、
慶應義塾大学医学部内科助教授を経て1995年より埼玉医科大学腎臓内科教授。
Total nephrologyのもと腎臓が世界の中心であるとの考え方をもって実臨床に携わっている。
現在は日本統合医療学会理事として統合医療を推進、趣味は 蝶を愛で、ラグビーをエンジョイし、ジャズに浸る。

タグ:医師
posted by IMJ2015事務局 at 15:23 | D統合医療に期待していること

【第15回】和田 雄志 先生

022和田 雅志.JPG


『統合医療とスピリチュアリティ』


和田 雄志 (ワダ ユウジ)
公益財団法人未来工学研究所 理事
日本未来学会 常任理事


 IMJ2015山口大会のサブテーマ「ヒトはBody,Mind,Spiritの存在」について、私の思うところを2点、述べさせていただきます。
 まず大会長のコメントにもありますように、ターミナルケアなどの臨床現場においては、魂の癒し、「スピリチュアリティ」とどう向き合うかは、避けて通れないテーマです。
いうまでもなく、医療は、患者の治療や延命を最大目的としています。日本は世界最高水準の長寿国になった反面、国民医療費は年々増加の一途をたどり、生涯医療費の半分が70歳以降に使われているのも現実です。

延命治療すべてを否定するものではありませんが、生命維持装置につながれたいわゆるスパゲッティ症候群などを見るにつけ、患者のQuality of Death(死をどのような形で迎えるか)、延命治療や尊厳死問題とどう向き合うのか、などについて統合医療学会ならではの多角的視点での議論や具体的な事例紹介を期待します。

 第2は、ヒトは、Body,Mind,Spiritの存在であるだけでなく、「社会的な存在」であるという視点です。医療従事者にとっては、目前の患者に目が向くのは当然ですが、同時に患者の「生活や人生へのまなざし」が不可欠な時代になりつつあります。特に生活習慣病やメンタルヘルスなどの領域においては、病院や診療所内での治療にとどまらず、日常生活の場やコミュニティケアの比重が増加しつつあります。現在、国や自治体が進めようとしている「地域包括ケア」において、統合医療や代替医療の認知度・関与度が極めて低いのも現実です。

 我が国は本格的な超高齢社会に突入しましたが、今後、統合医療の果たす役割はますます大きくなると思います。

 【略歴】
1974年 立教大学文学部心理学科卒業
   同年 財団法人未来工学研究所研究員
   現在 人口減少時代の社会モデル構築、高齢化するコミュニティの再生、
       未来身体(サイボーグ)研究などに取り組む。
タグ:その他
posted by IMJ2015事務局 at 15:46 | D統合医療に期待していること

【第6回】諌山 憲司 先生

010諌山.jpg


『統合医療に期待していること』


諌山 憲司 (イサヤマ ケンジ)
広島国際大学 救急救命学専攻 准教授


社会の仕組みの中で、縦割りなど各分野や専門職種間での対立が存在する。医療分野においても同様である。さらに、統合医療の分野においてさえ、信念対立が存在するというのは、理解し難い。本来、統合医療の趣旨は、西洋・東洋医学、TM・CAMを包括し、人の健康(Health)や生活(Life)を医療やヘルスの分野からよりよく継続できるようHLCP(Health & Life Continuity Plan)を提示することではないかと考える。私は、当学会内で唯一の救急救命士であろう。私自身、救急や医学へのこだわりはなく、もちろん救急救命士という資格や職域での信念対立は当学会内ではありえない。救急救命士が、私一人であるからだ。だからこそ、面白い。資格職の慣例や風習にも縛られず自由な発想ができるのではないかと感じている。私は、当学会員として3年ほどと会員経験や統合医療の認識は、決して長く深くない。しかし、当学会内での各資格職間での信念対立を感じることがある。対立している間は、まだ対立する余裕があるのだとも感じている。ただ、日本は現在の超高齢社会だけでなく、今後、顕著な人口減少社会へ向かう。さらに、近い将来、南海トラフ・首都直下地震などネクストクライシスの発生が危惧されている。そんな時代、信念対立している余裕はないはずである。近年では、医療やテクノロジーの進化にも伴い、健常者と障害者、医療者と患者といった区分は成り立たないと考えている。統合医療は次世代の医療やヘルスを担うものだと信じている。しかし、このまま各資格職間の信念対立が残存する限り、担うものには成り得ないだけでなく、旧態依然の医学・医療体系と変わらないものとなる。資格職からのアプローチではなく、各個人として自分の専門+医療・ヘルス以外の分野から様々なアイデアを活用し、医療資格を持たない住民などと共にHLCPを目指す者が集まり、個人のHLCPを深めていく。そこに、統合医療の真髄が活かされることを期待している。

【略歴】
消防本部 勤務, 救助隊員, 救急救命士
専門:博士(医学), 修士(国際関係学) 
日本統合医療学会認定師, 救災
社会災害医学, Survival Healthcare 
 第19回日本統合医療学会プログラム委員

タグ:救急救命士
posted by IMJ2015事務局 at 18:00 | D統合医療に期待していること