【第54回】渥美 英子 先生

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『統合医療は「人を生かす」』


渥美 英子(アツミ エイコ)
日本統合医療学会 常任相談役


私の統合医療の原点は、父荒川一郎にある。明治29年、美濃、木曽川沿いの医師の長男として誕生。日露戦争後の銀行倒産で家業は没落し、一家で上京。授業料が安いと府立一中、一高、東大医学部卒業。卒業後臨床医を志し、当時私立として一番大きな病院であった杏雲堂の内科で研修中、同じく研修医の綾と恋愛結婚。二人で東京駅に近い京橋で開業。関東大震災後の大正13年のことであった。
以後、約40年間、娘夫婦に引き継ぐまで、町医者を務めた。父は親に「おまえは、偉くなる必要はない。金持ちになる必要もない。ただ、患者に恥ずかしくない医者になれ」の教えを守り「医は仁術」を実践、体の病気だけでなく、心の病気にも深い関心をもち、心身共に健康でなければ真の健康とは言えず、これを守るのが医師の務めであるとの信念を持ち続けていた。

「患者を生かす」これが父の持論であった。ただ病気を治すだけではない。その人の背後に何かがあってそれが病気の根源となっている。例えば商売がうまくいかないとか、ものの考え方が悪いとか、あるいは不摂生だとか。その不摂生にも種類があるし、度合いも違う。そのような事柄をよく分析した上で総合的判断を下して病気の原因を取り除かなければならない。薬だけでそこまで取り除くことができるものではない。またそこまでやるのでなければ本当の医者にはなれない。そして、そこまで行くと、医者というものは実に面白いものである、と。
まさにこれが統合医療ではないだろうか。

統合医療は「人を生かす」ことである。

【略歴】
1930年東京生まれ。1955年東京女子医科大学卒、1956年同大学細菌学教室  助手、1958年東京大学第一生理学教室研究生、1961年医学博士の学位受領、1974年調布学園女子短期大学保健理論講師、1989年多摩大学保健理論講師
実家は代々続く町医者。両親、3人姉妹も医師。
タグ:医師
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【第53回】赤木 純児 先生

2015年9月2日赤木先生.jpg

「Evidence-based 統合医療の樹立のために」


赤木 純児(アカギ ジュンジ)
玉名地域保健医療センター院長
日本統合医療学会熊本県支部長



本年5月に、日本統合医療学会九州ブロック大会を主催し、230名の医療関係者に参加して頂き、大変盛況のうちに終了することができました。今回は、私が日頃行っている統合医療(免疫治療、ハイパーサーミア、漢方治療、CART療法)に関して、それぞれの専門家に講演して頂きました。特に、免疫治療に関しては、その免疫的指標という意味で、私は統合医療おいて大きな期待を寄せています。

 統合医療は、多種多様なものがありますが、その共通のコンセプトは、西洋医学では完全に無視されている、自然治癒力の強化ではないかと考えます。しかし、自然治癒力を客観的な数字などで表現することは現在の医学では不可能なのが現状です。私は、自然治癒力≒免疫力と解釈して、免疫力を評価することで自然治癒力もかなりの確かさで評価できるのではないかと考えています。統合医療の発展のためには、自然治癒力・免疫力の判定方法を確立する必要があります。この中でも最も簡便な方法として、我々が用いている好中球/リンパ球比があります。この値は、統計部癌、乳がん、肺癌、胃癌、肝癌、大腸癌などで、予後予測因子になることが報告されています。我々が行なっている低容量化学療法併用温熱療法の症例でのNLRは、カットオフ値が2.6で、NLR>2.6の症例はNLR<2.6に比して予後不良でした。また、CR, PR, SDになる症例のほとんどは、治療後にNLRが低下した症例でした。このNLR値は癌患者の免疫抑制に関与しているMDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)とよく相関することが知られており、この意味でNLRは癌患者の予後を反映していると考えらます。

 一方、我々が用いているもう一つの免疫パラメータである、CD27/CD70/CD57系は、T細胞上でcostimulatory factorとして免疫調整に重要な役割を果たしているCD28/CTLA4/CD80/CD86と同様に、やはりcostimulatory factorとして抗腫瘍免疫と免疫寛容の両者を制御しているということで、最近注目を集めています。CD27は、TNF receptor superfamilyに属しており、T細胞のシグナル伝達に関与していることが知られています。我々は、CD27/CD70/CD57系で、CD27+CD57? T細胞が増加する場合には予後不良に働き、CD27?CD57+ T細胞が増加する場合には予後良好に働くことを報告してきました。やはり、CR,PR, SDになる症例のほとんどが、治療後に、CD27+CD57? T細胞が減少し、CD27?CD57+ T細胞が増加する症例でした。Treg(CTLA4)は我々の系では予後との相関は認められませんでした。

 このように、末梢血中リンパ球のCD27/CD57の発現、そしてNLRを測定することによって、患者の免疫状態を把握することができると考えます。

  今後の課題として、これらの免疫判定パラメーターを用いて、例えば、客観的な効果判定が困難である、ヨガ療法や瞑想療法などの治療施行前後でこれらのパラメーターに変化が出るのかどうかを調べていきたいと考えています。

【略歴】
1983年3月  宮崎医科大学卒業
1983年4月  熊本大学医学部附属病院第二外科入局
1984年10月  熊本市民病院(外科、麻酔)
1989年3月  熊本大学医学研究科博士課程修了
1989年4月  国立宮崎病院
1991年7月  熊本大学医学部附属病院第二外科
1992年11月  米国NIH(NCI 米国国立がん研究所)
       (Tumor Immunolgy & Biology(Lab), Dr Schlom)
1995年4月  熊本大学医学部附属病院第二外科
1998年7月  玉名地域保健医療センター外科部長
2000年6月  国立病院機構熊本南病院診療部長
2010年4月  玉名地域保健医療センター院長

タグ:医師
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【第52回】北 虎哲 先生

2015年8月14日○052北 虎哲2.jpg


『己を知ることが第一歩』



北 虎哲(キタ コテツ)
(公社)日本鍼灸師会青年委員会副委員長
(公社)富山県鍼灸マッサージ師会理事 組織・青年部長
富山鍼灸学会 総務部長

 本年の4月に、私が所属する(公社)富山県鍼灸マッサージ師会の定期学術講習会として、砺波総合病院における東洋医学科(鍼灸・漢方)と他科との連携、外部鍼灸院との地域連携の講演が行われました。
この中で、院内での鍼灸の提供にはベッドの数はもちろん、通院距離などの問題から限界がある為、出来れば地域中核病院と開業医院の関係の様に、砺波総合病院東洋医学科と地域の鍼灸院の間で地域連携ができたらありがたいという事を東洋医学科主任の医師から仰って頂きました。

 現状は、病院・医師の側には鍼灸師・鍼灸院の情報がまるでなく、同科中心で行っている勉強会を通じて知り合った近隣の鍼灸師に依頼をする程度のことしか出来ずまだまだ課題が多いとのことでした。

 これに対して、では地元の業団ですぐに対応出来ることはなんだろうか?と考えましたが、会員名簿をお渡しして鍼灸院を紹介している業団のWebサイトのご利用を薦める程度のことしか出来ないという事を少し残念に感じました。

 この例はまだまだ希だとは思いますが、これから10年掛けて地域包括ケアシステムが構築されていく中で、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師が、介護予防運動の指導をする程度の関わりしかもてない状況をこのまま業団が座視する事は無いはずです。

 必ず、本業である"鍼灸マッサージによるQOLの改善"をベースにした介護予防やさらにいえば寝たきりからの回復などにも大きく貢献していける事をアピールし、それらの役割を担う事を求めていくことになる筈です。

現在鍼灸の受療率はデータの上では5%あまりと言われます。
 なぜこれほど受療率が低いか?現場で患者さんに接していて言われる事は「どの鍼灸院に行けば良いか解らない」「良い鍼灸院が近くにない(知らない)」ということです。

そのような情報不足の状況から患者さんのニーズと鍼灸院が提供している施術のマッチングのミスが起こっている事が大きな原因ではないかと私は思っています。

 また、養成学校の乱立により鍼灸師の数は倍以上にふくれあがってはいますが、それでもまだまだ十分な数の鍼灸院が日本全国に遍在しているとは言えません。

 結果として「受けたい施術を通院に便利な地域で受けられない」というミスマッチが生じ、さらに自分のニーズにマッチする鍼灸院を見つける努力やリスクは患者さん側に押しつけてしまっている現状である事が、現在の低受療率という結果を招いているのではないかと思います。

 では、それを解消するには鍼灸業団はどうしたら良いのか?
業団の外の医療者との連携をとれる人材の育成や交流という事も非常に大切なことですが、もう一つ大切なことは、まず第一に鍼灸マッサージ業団として自分達は何をもっているのか?自分達の中には何ができる人がいるのか?を正確にきめ細かく、さらにリアルタイムの状況を知っておくことがとても大切な事だと思います。
提供できる物がリアルタイムで把握できていなければ、求められた際・また提案する際にミスマッチを起こしてしまいます。

 その為には、やはり業団の組織統合を進め、太い根幹となるネットワークを作ることが大切な事だと思います。窓口を統合し管理業務を統合省力化し、同業者の多くが所属し、また活かされていく組織作りです。

 そうして、医療・介護職種と有機的に連携を計ることで、前述のマッチングのミスをなくし、鍼灸マッサージの恩恵を受けることができる患者さんに、十分にその恩恵が行き渡る様にしてゆくこと、そういう体制を業団として用意していくことが大切だと思います。

統合医療の中で、鍼灸マッサージが求められた際に、専門職として最適な形で十分に提供ができる事。"国民の健康の為に鍼灸マッサージを活かしてもらいたい"との想いを叶えるには、活かしてもらいやすいように自分自身の情報を整理して提供しやすく状況を作っておくことが、地味ですはありますが大切な土壌作りではないかと考えます。

【略歴】
 昭和49年(1974年)6月生まれ。
 平成9年 呉竹学園「東京医療専門学校」鍼灸科 卒業。
 平成9年 はり師・きゅう師国家試験合格。はり師・きゅう師免許取得。
 平成13年 本町北はり灸院を開業。

 (公社)日本鍼灸師会青年委員会副委員長
 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会理事 組織・青年部長
 富山鍼灸学会 総務部長


タグ:鍼灸師
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